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俳優の教科書コラム

コラム
2021.03.27

#006 俳優訓練におけるイン・アウトの配分法則

今回は、俳優のトレーニングをインプットアウトプットの2種類に大別して、私の考えていることを書いてみようと思います。

インプットによる訓練とは、主に「読む」「観る」「聴く」です。これらを日々の生活の中に馴染ませ、狭くなりがちな俳優の視野を拡げることが目的です。

具体的に「読む」対象となるものを挙げてみましょう。真っ先に「映画脚本」ですね。
本コラムの「#004 アジアで勝ち残る俳優に必要な3つのマインドチェンジ」でも書きましたが、映画俳優を志す人は、1日も早く「脚本読解力」の必要性に気づき、多少時間がかかっても構わないので、このスキルを引き上げなければいけません。
テレビドラマやテレビ局の製作による映画の場合、幅広い視聴者や観客に届ける為、お話をできるだけわかりやすくしています。脚本も説明過多となりがちなので、「脚本読解力」を鍛えるという目的ではこれらの脚本は向いていません。骨太な映画脚本を選び、1ヵ月に1冊、味わうように読むことをお薦めします。慣れてくれば年間30冊を目標にするのがよいでしょう。その他、「戯曲」「小説」「詩」「雑誌」「新聞」「歴史書」など、文字で書かれたものを丁寧に吸収していくメリットは大きいです。

次に「観る」対象となるものは「映画」「演劇」「ミュージカル」などですね。伝統芸能に位置づけられる「能」「狂言」「歌舞伎」「落語」から学べることも多いです。また、「博物館」「美術館」に足を運んでみることも多くの気づきが得られる機会だと思います。

そして「聴く」対象となるものは「音楽」「朗読劇」、そして何より人の話に耳を傾けることが大切です。特に監督、脚本家、俳優、プロデューサー、音楽家、技術スタッフ、演技トレーナーなど、業界の第一線で活躍されている先輩方の話は貴重ですね。業界外でも、旅先で出会った農家の方々や、靴や鞄などを作っている職人さんにお話を伺ってみることも、同じものづくりに関わる人間として勉強になることが多いでしょう。

一方、アウトプットによる訓練を考えてみましょう。俳優としての経験が浅い方は「演じる」ことに全ての意識が集中しがちなのですが、それ以外にもアウトプットとして重要な項目は多いのです。例えば「話す=言葉にすること」「書く=文字にすること」です。自分の感じたことや頭の中で考えていることをきちんと自分の言葉や文字で、誰かに伝えることは意外と難しいし、苦手と感じている人も多いでしょう。でも言葉にすることができない俳優は、たいてい演技もおぼつかないものです。映画を観たり、本を読んだりした感想を人目にさらされるブログに書いてみるなどがお薦めです。自宅でも十分取り組めるし、お金もかからないので是非取り組んでみてください。

最後に大事なことをお話します。
私は経験上、俳優の訓練が100だとした場合、インプットが60、アウトプットが40の配分が、最も早く、深みのある俳優として成長できる割合だと考えています。ベスト法則だと言ってもいい。
しかし、若い俳優さんはどうしてもアウトプット、それも「演じる」ことだけに偏りがちです。つまり、インプットの配分が20、10と極端に少ない。ひょっとしたら、0なんて人もいるかもしれません。

皆さんが少しでも多く演じていたい気持ちはとてもよくわかるし、養成所やワークショップの場で、演技レッスンをひたすら繰り返すことによって得られる効果も勿論あるのですが、前述した通り、アウトプットによる訓練だけで成長できる上限は精々40程度なんです。更にその内訳を「演じる=15」「言葉にする=15」「文字にする=10」とした場合、演じているだけはすぐに壁にぶち当たってしまうことがお分かりいただけるかと思います。また、イン・アウトは互いに連動していますから、インプットの質や量を充実させれば、必ずアウトプットとしての芝居の質も目にみえて伸びていくものです。
このことに気づかず、何年も同じ悩みを持ち続けている人がどれだけ多いことか。

このイン・アウトの法則は、ものづくりを仕事としている人たちであれば、映画監督だって、作曲家だって、画家だって知っているし、実践しています。第一線で活躍している人になればなるほど、インプットの重要性を身に染みて分かっていて、70、80、90と増やしている人が多いですね。
女優の安藤サクラさんは、かつてキネマ旬報のインタビューで「私の場合は映画の撮影現場が大きなインプット」と答えています。現場で出会うキャスト・スタッフから多くの刺激をもらうということでしょうが、確かに映画というものづくりの中に身を置くメリットは大きいですね。そういう意味では若いうちは俳優というポジションにだけ固執することなく、最初は現場のお手伝いなどから映画づくりに参加してみることをお薦めします。

映画24区トレーニングが実践している「映画俳優スタートアップ・オンライン」は主にインプットに、「映画俳優スタートアップ合宿」は主にアウトプットに重点を置いた訓練です。実は昨日、春の合宿から戻ってきたのですが、日頃の脚本読解を始めとするインプット訓練に取り組んでいる子たちは吸収力が抜群にいい。この差がはっきりでますね。改めてイン・アウトの配分効果を再認識した次第です。

以上、私が考える、俳優訓練におけるイン・アウトの配分法則でした。

◆筆者:三谷一夫
映画24区代表・映画プロデューサー。関西学院大学を卒業後、金融業界を経て、映画会社に転身。『パッチギ!』『フラガール』を生んだ映画会社の再建に関わる。2009年に「意欲的な映画づくり」「映画人の育成」を掲げて映画24区を設立。直近のプロデュース参加作品に映画『21世紀の女の子』『ぼくらのレシピ図鑑』シリーズなど。著書に『俳優の教科書』 『俳優の演技訓練』がある。twitter FB

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