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俳優の教科書コラム

コラム
2020.12.23

#004 アジアで勝ち残る俳優に必要な3つのマインドチェンジ

「アジアで勝負できる俳優になる」シリーズ連載 第4/4回  ※シリーズ第1回第2回第3回

これまでの邦画メジャーは国内マーケットを対象に「製作委員会方式」という日本特有の映画ビジネスモデルを発明し、人気原作やタレントを中心とした映画作りを行ってきました。

しかし、コロナ以降、国内の映画館による回収が不確定要素となってくると、アメリカやヨーロッパのように、近隣のアジア諸国と組んでマーケットを国外に拡大していく形も積極的に検討され始めると思います。

これは日本の無名俳優にとっては大きなチャンスです。なぜなら、これまで国内で必要とされていた出演キャストの知名度はキャスティングにおいて重要ではなくなるからです。問われるのは俳優に本物の力があるかどうか。当然、国境をまたいだ作品作りとなれば、ライバルは強豪の韓国や中国まで拡がる訳で、より熾烈な競争となるでしょう。但し、正しい努力が結果に結びつきやすくなる分、やりがいもこれまで以上にでてくるはずです。

その時に備えて、今すぐにでも取り組んでほしいと私が考える「アジアで勝ち残れる俳優になるための3つのマインドチェンジ」を示唆しておきます。アジアから力強い作品を世界に向けて発信できる俳優と1人でも多く巡り会いたいと強く願っています。

① 演技力よりも脚本読解力を鍛えよ
私は日頃レッスンで顔を合わす俳優たちには常々言っていますが、年齢や経験に関係なく、真っ先に力を注ぐべきは、作品が持つメッセージを掴む力、つまり「脚本読解力」を磨く訓練です。これに尽きると断言できる程、今の若い俳優たちは物事を自分の頭で読み解き、想像する力が劣っています。演奏に例えるなら、楽器の音をピーピー鳴らしているだけでなく、まず自分で楽譜を読めるようになろう、そして音楽作品そのものが持つ魅力に触れる経験を重ねていこうということです。脚本読解力がついてくれば、自ずと演技力はあがっていくものです。

② アウトプットよりもインプットを重視せよ
日本の俳優訓練は「アウトプット(演じたり言葉を発したりすること)」に重きが置かれているのですが、そもそも質の高い「インプット」がないと、質の高いアウトプットは望めません。質の高いインプットとは、「読む」「観る」「聴く」などを通じて、教養を高めることです。映画鑑賞だけに限らず、本を読んだり、観劇をしたり、音楽を聴いたり、業界の先輩の話をじっくり伺う時間を持ってほしいなと思います。また、映画俳優を志す人は歴史や言葉の勉強は欠かせません。人類が長い歴史的背景の中で、どんな言葉を使って、何をどのように表現しようとしてきたのか。日々探り、考え、吸収していく時間がボーダーレスな空間に生きる俳優の基盤を形成します。

③ 短期思考ではなく長期思考
私は、俳優には、常々「短期思考」ではなく「長期思考」でいることを強く言っています。例えば1ヵ月のカレンダーで考えた場合、日本の俳優が演技レッスンに費やす日数は、平均して5~6日程度でしょうか。どうしても力の入れ具合いが、一時的、断片的になりがちです。それよりも残りの25日間、どうすれば思考を活性化させた状態で過ごせるかということに、もっと真剣になって考えるべきです。日常に俳優としての訓練そのものを組み込んでしまう発想ですね。ワークショップに参加した時の高揚感はすぐに忘れてしまいますが、毎日の中で積み上げていく訓練や物事を考え続ける習慣は、俳優の肉体や思考を柔軟且つ強固なものにしてくれることは間違いありません。

映画俳優スタートアップONLINE

私が代表を務める映画24区で運営している『映画24区トレーニング』でも、長年、映画俳優の育成に取り組んできましたが、世の中の状況の変化を受けて、運営スタイルを見直すことにしました。といっても180℃方向転換する訳ではなく、これまでの指導方針をふまえながら、映画俳優を志すすべての人に向けた訓練の環境をオンラインで提供します(『映画俳優スタートアップONLINE』を2020年10月より新たに開始予定)。また、映画24区の活動拠点も、映画界の本拠地であり、松竹大谷図書館や国立映画アーカイブといった映画を勉強するにはこれ以上ない場所である銀座に移すことにしました。今後は演技ワークショップの開催だけではなく、俳優の新しい生活様式そのものを提案し、高いレベルで俳優をサポートしていきたいと考えています。
 
 
◆筆者:三谷一夫
映画24区代表・映画プロデューサー。関西学院大学を卒業後、金融業界を経て、映画会社に転身。『パッチギ!』『フラガール』を生んだ映画会社の再建に関わる。2009年に「意欲的な映画づくり」「映画人の育成」を掲げて映画24区を設立。直近のプロデュース参加作品に映画『21世紀の女の子』『ぼくらのレシピ図鑑』シリーズなど。著書に『俳優の教科書』 『俳優の演技訓練』がある。twitter FB

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